新橋名姑、ぽん太

ぽん太、本名谷田恵津（ゑ津）と言い、明治十三年十一月二十日生まれ。明治時代の

新橋、玉の屋の芸者で美貌と粋で人気を博した。17歳の時、写真家、鹿島清兵衛に落

籍され、妾となるが、後、本妻となる。ぽん太は夫に傅き、踊りの師匠となり、ときには

寄席、地方巡業にも出て家計を助け、また夫の写真業の助手なども務めた。その貞淑

な姿、様は「世に貞女ぽん太」と称され賛美を浴びた。夫、清兵衛が大正13年に病没す

ると、翌年、大正十四年四月二十二日肝臓腫瘍でその後を追うようにぽん太も45歳と

いう短い生涯で他界した。なお、長男は能役者に、二女くに子は坪内逍遥の養女となっ

て、後に演劇研究家、飯塚友一郎へ嫁す。ぽん太の写真には笑っているものがないが、

これは夫、清兵衛の言いつけとも、また当時そのような構図の写真を撮ることが一般的

でなかったとも言われているが定かでない。清兵衛との間には十二人の子を成す。

★ゑ津の収入は、その当時のサラリーマンの

月収百五十円位に対し五百円もあったと

いう。

【飯塚友一郎】

　1894.11.11(明治27)に東京で生まれる。演劇研究家

　1919(大正 8)東京大学法学部卒後、十年間弁護士を

　開業。日本大学・二松学舎大学の教授を経て演劇研

　究に専念。1983. 4.21(昭和58)他界　

　坪内逍遥の娘婿(坪内くに子、逍遥の養女)